5度圏を触って覚える — ピアノ練習ツールに円環を足した
調号・平行調・ダイアトニックコード・コード進行が、5度圏の1枚の円環の上でつながる。クリックすると音が鳴るインタラクティブな5度圏を作りました。

調号を「暗記」する壁
以前、ピアノ練習に役立つ4つのツールを作った。そのうちの1つ Scale Reference は「この調の♯はどれだっけ」を引くための早見表だった。便利ではあるが、引くたびに調号を「思い出す」動作が残る。
調号の♯♭を1つずつ暗記するのは、曲が複雑になると破綻する。ト長調は♯1つ、ニ長調は♯2つ…と丸暗記しても、いざ楽譜を前にすると詰まる。そもそも調と調の関係が見えていないからだ。
この関係を1枚で見せてくれるのが**5度圏(Circle of Fifths)**だ。時計回りに5度ずつ進むと♯が1つずつ増え、反時計回りに進むと♭が増える。隣り合う調は近親調で、実際に転調でよく使われる。外周のメジャーと内側の平行短調は、同じ調号を共有する。
この「関係の地図」を、ただ眺めるのではなく触って音を鳴らせるものにしたかった。
作ったもの
Circle of Fifths は、ブラウザで動くインタラクティブな5度圏だ。円環のどれかのキーをクリックすると、そのキーにまつわる情報が一度に開く。
円環:外周メジャー・内側平行短調
上が C / Am、時計回りに5度ずつ。外周がメジャー、内側が平行短調。選んだキーがハイライトされ、両隣の近親調も薄く色づく。「5度上に行くとは円環を1つ右に回すこと」が視覚的にわかる。
クリックで開く情報
キーを選ぶと、パネルに次が並ぶ。
- 調号 — ♯×2、♭×3 のように、記号の種類と数
- 平行調 — メジャーなら平行短調、マイナーなら平行長調
- 近親調(5度隣) — 転調先の候補として使える両隣のキー
- 鍵盤スケール — 1オクターブの鍵盤上に、その調の構成音をハイライト(根音は枠で強調)
- ダイアトニックコード — I・ii・iii・IV・V・vi・vii° の7つを度数付きで表示
そして選んだ瞬間に主和音(トニック)が鳴る。目で見た調が、耳でどう響くかを同時に確かめられる。
メジャー / マイナー切替
ラジオボタンで切り替えると、円環のハイライトが外周と内側で入れ替わり、ダイアトニックコードも短調のもの(i・ii°・III・iv・v・VI・VII)に変わる。自然的短音階は平行長調のスケールを6番目(vi)から回したものなので、内部では同じスケールを回転させて出している。
コード進行デモ
このツールの中心はここだと思っている。定番のコード進行をボタン1つで自動再生する。各コードが 0.7 秒間隔で鳴り、同時にダイアトニックコード表の該当コードがハイライトされる。
- メジャー:カノン進行(I - V - vi - iii - IV - I - IV - V)、王道進行(IV - V - iii - vi)、小室進行(vi - IV - V - I)、4コード(I - V - vi - IV)
- マイナー:定番マイナー(i - VI - III - VII)、アンダルシア(i - VII - VI - v)、6-4-1-5 短調
進行を「度数の並び」として聴くと、キーを変えても同じ響きの型だと体でわかる。カノン進行を C で聴いたあと G に切り替えて同じボタンを押せば、「調が変わっても進行は同じ」ことが耳で確認できる。
音のオン/オフ・スケール再生
音を鳴らしたくない場面のためのトグルと、選んだ調のスケールを1音ずつ上って鳴らす「スケールを弾く」ボタンを付けた。音は Web Audio の三角波で、外部音源なしにブラウザだけで完結する。
4つのツールとの違い
前の4ツールは「メトロノーム」「読譜」「早見表」「タイマー」と、それぞれ別の課題に対応する道具だった。5度圏は少し性格が違って、調・スケール・コード・進行という別々に覚えがちな要素を、1枚の円環の上で結びつけるためのものだ。
Scale Reference が「引く」ツールなら、Circle of Fifths は「関係を掴む」ツール。暗記の代わりに、円環の形と音の響きで調どうしのつながりを体に入れる。理屈は音楽理論の系譜シリーズでも書いたが、触って鳴らせる形にすると腑に落ち方が違う。
ブラウザでタブを開くだけで使えるので、練習の合間に「今日の曲の調の近親調は?」とさっと確かめる、といった使い方もできる。